そして新米パパは小腸がんになった。

働き盛りの30代、長男生まれて2ヶ月後、新米パパは小腸がんになった。がん患者の日常と心情を徒然なるままに綴るブログ。

-26- じゃれ合う笑顔。

当日の朝は、6時には目が覚めた。 昨夜は思いの外、よく眠れた。 手術の順番は朝一番なので、8時半には病室を出て手術室へ向かう。 奥さん、両親、兄が病室に来てくれた。 みんな笑顔だが、目は笑っていない。 みんな、ありがとう。心配かけるね。 まあ、ち…

-25- 前日。

「おへそ、キレイですね〜。」 そうですかぃ? たとえどんなところでも、看護師さんに褒められれば悪い気はしない。たとえおへそでも。 お腹を切るので、手術前におへそを掃除してくれた。 「ストーマの位置をマーキングしますね。」 下腹部にペンで印が付け…

-24- 生きてるだけで幸せ。

「小腸の終わりの部分に、腺がんが原因の大きな悪性腫瘍ができています。回盲部にも炎症があるので、がんそのものだけでなく、この周辺を根こそぎ取り除いて、小腸と大腸を繋げます。がんに近いリンパ節は必ず切除します。かなり大規模に取り除くので、30センチ…

-23- 味。

朝、必ず回診がある。 カーテンをシャッていきなり開けるので、油断していると危ない。 「絶飲食、どうですか?」 どうですか、って言われてもなぁ…。 いやー、キツいです。でもまあ、もう慣れましたよ。 「そうですねー。もう1ヶ月になりますもんねー。キツ…

-22- とあるおじさんの苦悩。

「昨日の検査の結果が出ましたよ。他に転移はしてないです。大丈夫、手術できますよ。」 あぁ… よかった…。 ありがとうございます。よろしくお願いします。 「小腸から離れたところには転移してないけど、小腸と大腸の周りにはがんがいくらか広がってるよう…

-21- トモダチ。

さすがの専門病院。内視鏡検査だけを行う大きな病棟がある。 点滴とイレウス管を引き摺りながらフラフラしばらく歩いて移動。大腸カメラはここのところ週1ペースでお尻に入れていたので、綿棒でも耳に入れるかのような気楽さだった。 世の中そううまくいかな…

-20- 握手と陽気。

大都会のど真ん中だった。 高層の窓から見える景色は、およそイメージしてきた病院のそれとは似つかわしくない豪華さだった。 「話は前の病院の先生から聞いてますよ。一緒にがんばっていきましょうね。」 握手が印象的に力強い先生と、陽気な関西弁の先生の…

-19- 暴走する妄想。

「乳児は色々と感染の恐れがあるので、病院には連れてこないように。」 事前に病院から言われていた。 何ということだ…。 生ける宝物、又の名を長男に会えない…ですって…? 医者がそう言うならしょうがないけど…。 転院前の病院では、1階の待合室までなら連…

-18- 流れ行く景色。

転院先の病院は車で30分程。 親が車で来てくれた。 最初に入院したこの病院は、初め夜間救急で来たときは3時間待たされたり結局胃腸炎って言われたり、正直第一印象は良くなかったけども。いざ入院したら先生達は真摯に、丁寧に対応してくれた。色々苦しい処…

-17- いったりきたり。

「明後日、転院できるそうです。すぐに検査をして、なるべく早く手術も段取りしてくれるそうです。」 後で聞いたが、事前に連絡は一本していたそうだ。 ありがたい話だ。 とてもスムーズに転院ができそうだ。 覚悟は決まった。 専門家中の専門家に全て委ね、…

-16- プライド。

ドラマや映画やら、勝手にイメージしていた告知ってもっとこう…なんて言うか……仰々しいものだと思っていたけど、案外アッサリなものなのね…。 覚悟はしていた。 うん。 がんである、ということは受け入れた。 実際そこに存在しているのだから、受け入れざる…

-15- 告知。

「急で大変申し訳ないが、今日、家族の方病院に来れますか?だめなら明日でもいいですが…。」 特急の生検から約1週間が経った日の朝、先生から聞かれた。 土日を挟んで1週間なので、本当に急いでくれたようだ。 まあ…そう聞かれた時点である程度は覚悟してい…

-14- 満員。

「下剤も浣腸もいらないですね。」 ええ。どうせ何も出ませんからね。 「はっはっはっ。」 はっはっはっ。 そんなやり取りから始まった朝だった。 2度目の大腸カメラはとってもスムーズ。大腸を突破し、小腸へGO。生検の数は前回の3倍、斬って斬って斬りまく…

-13- 夜。

消灯時間は22時。 いつも通り食べ物の動画と写真を見終えたところで、眠くなってきた。 寝よう寝よう。明日は検査だ。 ふとんを掛けて、目を閉じる。 ふー…っ。 なんとなく、スマホを開ける。 なんとなく、検索サイトを開く。 「小腸がん」 数万人に1人の希…

-12- まだわからないけど。

「ちょっと驚く話になってしまうかもしれないけれど。」 先生が前置きした。 パソコンとモニターがある小さな談話室。 先生と鼻から管の人の、1対1だ。 「正直、私達も驚いています。私達は今でもクローン病の可能性が一番高いと思っています。」 はい。そう…

-11- 別室。

病室ではテレビを見れたけど、食べ物が映った瞬間チャンネルを変えるので忙しかった。夕方のニュース番組は半分はグルメ番組なので、前半しか見なかった。 絶飲食は2週間を過ぎた頃がピークで、とにかく食べ物飲み物を見るのが嫌だった。匂いも音も嫌だった…

-10- 穴だらけ。

GWが明けるとすぐ、ウチの社長がお見舞いに来てくれた。 相変わらずフットワークが軽い。こんな鼻から管出てて喋れない社員ですいません。ありがとうございます、と、かすれ声でお礼。 お見舞いといえば、奥さんとウチの両親は毎日のように来てくれた。両親…

-9- 先立つものは。

GWのちょうど谷間の平日に入院した。 たまたまそのまま5連休に入るのでよかったけど、GWが終わったらどうしよう?産婦人科の病院が遠かったので付き添いを繰り返していたから、有休があんまりない。欠勤にしたら、お金がヤバいしな。 まあ、薬で治るなら2週…

-8- 壊れかけの羞恥心。

栄養だけじゃなかったのか……。 点滴は液体なのだから気づいていいものだが、それだけイレウス管が痛くて冷静でなかった。ということにしておこう。 看護師さんが朝食を配り始めた。 絶飲食の自分にも間違って配られないか少し期待したがそんなことは全くなか…

-7- 真夜中の営み。

入院するのは人生で2回目。 1回目は5年ぐらい前、盲腸だった。 あの時は仕事はまだ前職。2ヶ月ぐらい休みがなかったので、ようやく病院に行ったら手遅れ一歩手前だったそうだ。盲腸はほっといたら死ぬ病気なんだよと、先生に本気で怒られたのはいい思い出。 …

-6- イレウス。

【イレウス(腸閉塞)】ギリシャ語の「捩れる、巻き上げる」を語源とする。当時は体内の様子を見る術はないので、「患者が身を捩って悶え苦しむ」様子からきている。 「やっぱりなかなか水が出ないので、小腸まで管入れますね。」 はいはい、今入ってるのをも…

-5- 左から右へ。

詰まってたのか……。 はりきって摂ってた水分が溜まりに溜まって小腸から胃まで逆流。そりゃ吐くわ。 言われてみれば、その頃になると出すのは下からでなく専ら上からばかりになってた。 緑色なのは腸液の色だって。 自分の体の中にこんなピッコロさんの血み…

-4- サイレン。

大通り沿いにあるウチのマンション、救急車のサイレンがいつもうるさくて仕方ない。 でも今夜のサイレンは僕を迎えに来てくれた正義の味方参上のテーマ。 救急車呼ぶ前に救急病院に自分でいくつか電話してみたけど、どこも受け入れはできない、明日朝外来に…

-3- 元からパンパン?

次の日は土曜日で休み。 この間病院行ったけど、吐くようになっちゃったからなぁ。下痢も止まらないし、お腹が張ってきた。出して飲んでプラマイゼロのはずなのに、なぜにお腹が張ってくる?もう4日ぐらいほとんど何も食べてないぞ。 フラフラしながらもう一…

-2- バケツをひっくり返したような。

仕事していてもお腹痛い。 うーん、何かヘンなもの食べたかな。 まあいいや、そのうち治るでしょ。 その日は午後から休みを取って、長男の予防接種へ。ロタウイルスだけ有料。スプーン数杯で1回1万5000円。これも補助してもらいたいなぁ。 その帰り、ショッ…

-1- お腹痛い…?

2017年は年初からバタバタだった。 ウチの会社は12月から3月が繁忙期、空気読まずに正月明けからインフルエンザでダウン。予防注射って感染しないわけじゃないのね…。 ようやく復帰して溜まってた仕事に超追われる最中、2月に待望の第1子長男誕生! なんてこ…