そして新米パパは小腸がんになった。

働き盛りの30代、長男生まれて2ヶ月後、新米パパは小腸がんになった。がん患者の日常と心情を徒然なるままに綴るブログ。

-16- プライド。

ドラマや映画やら、勝手にイメージしていた告知ってもっとこう…なんて言うか……仰々しいものだと思っていたけど、案外アッサリなものなのね…。

 

覚悟はしていた。

 

うん。

 

がんである、ということは受け入れた。

実際そこに存在しているのだから、受け入れざるを得ない。

あとは、治るかどうかだ。

 

 

 

よく言われる、クローン病による炎症からがんにかかったわけではないんですか?

クローン病にはかかっていません。がんだけです。」

 

転移はしているんですか?

「レントゲンで見た限り、転移はしていないと思います。ただ、リンパ節が腫れている部分があります。リンパ節が腫れていると、もしかしたら転移している可能性はあります。もしくはこれから転移する可能性は高いです。」

 

心が、ざわっ…とする。

 

治るんでしょうか?

「手術して、悪い部分を根こそぎ取り除くことができれば、十分根治を目指せる状態ではあります。」

 

リンパ節が腫れていて、今にも転移してしまうということはないんでしょうか?

「数日とか数週間とかの時間で大きく進行する、ということはありません。ただ、早く手術するに越したことはないですが。」 

 

とにかく、転移が怖かった。

何がどう具体的に怖いのかは、正直知らない。とにかくがんでは転移が怖いんだ、というイメージだった。

 

ステージはいくつなんですか?

「小腸がんは希少がんなので、他のがんのようにはっきりとしたステージの基準のようなものはないのですが、転移は認められないことを考えると、ステージ3ではないかと思います。少なくとも早期発見では残念ながら、ありません。」

 

ステージは4からが厳しいというのはテレビの知識で知っている。

手遅れじゃない。

先生の話は、不安にさせるが希望も与えてくれる。

 

たまたま、幸い希望がある状態だった、というだけかも知れないが。

 

治すためには、手術をするしかないんですね?

「そうです。」

「その手術について、実はお話があります。」

「当病院でこのまま手術をすることはもちろんできます。できますが、小腸がんの手術の経験は、ありません。言い方はアレですが、よくあるがんはたくさん手術しています。一応、大腸がんの手術経験で対応できるとは思うのですが、経験がないのは事実です。」

「そこで1つの提案として、がん手術が経験豊富、もちろん小腸がんの経験がある病院へ転院して、そこで手術するということも考えられます。どちらかを選択してもらうことになります。」

 

むぅ………………。

 

それぞれのメリットデメリットは?

「当病院でやれば、手術までの時間が短いですが経験が少ないです。がんの専門病院はその逆です。」

 

転院した場合、手術までどのくらい時間がかかりそうですか?

「転院する場合はすぐに先方に連絡を取ります。向こうのベッドの空き具合にもよるんですが、なるべく早く転院できるように交渉します。手術はさらにその先なので…うまくいけば2週間後ぐらいに手術できるかも知れないです。ただあくまで先方の都合によるので何とも言えないところではあります。」

 

そうですよね。

早く手術したいのは山々だ。転移が怖いのだから、普通に寝てても恐ろしい。時間が経つのが、恐ろしい。

 

でもね…………。

 

「今すぐ決める必要はないですよ。1日ぐらいじっくり考えてもらってからでいいです。」

 

いや……。

 

 僕の中ではもう結論は出ていた。

こんなもの、1日考えようが1分考えようが、同じだ。迷ってる場合じゃない。迷うところじゃないだろう。

 

だってそうだろう?

こっちは医療のことなんて何もわからない素人だ。先生はプロだ。

そのプロが、プライド捨てて転院を提案してくる。素人が何も逆らうことはない。

 

プライドを捨てる。

頭がいい人ほど難しい。だから、信用できた。

それは、この病院に入院してからの先生の誠実な対応への信頼があってこそだったけど。

 

家族には悪いが、その場で決めた。

 

 

転院します。

 

「…わかりました。今すぐ先方へ電話します。」