そして新米パパは小腸がんになった。

働き盛りの30代、長男生まれて2ヶ月後、新米パパは小腸がんになった。がん患者の日常と心情を徒然なるままに綴るブログ。

-12- まだわからないけど。

「ちょっと驚く話になってしまうかもしれないけれど。」

 

先生が前置きした。

 

パソコンとモニターがある小さな談話室。

先生と鼻から管の人の、1対1だ。

 

「正直、私達も驚いています。私達は今でもクローン病の可能性が一番高いと思っています。」

 

はい。そういう話でした。

 

 

「生検の結果、がんの疑いが出ました。」

 

はい。

 

 

 

…え?

 

がんって、あのがん、だよね。

 

「生検でがんの可能性は5段階で示されます。白、薄いグレー、グレー、濃いグレー、黒、とイメージするとわかりやすいと思います。今回、濃いグレーの結果が出ました。」

 

「私達は今でもがんであるとは考えにくいと思っています。というのは、今回濃いグレーの出た生検を取った場所は小腸だからです。大腸で取ったものは白でした。」

「小腸は心臓の次にがんが出来にくい部位と言われています。小腸にがんができるケースは、消化器官にできるがん、胃がんとか大腸がんとか…の1%程です。とても稀ながんです。」

「私達は今でもクローン病による炎症である可能性が一番高いと思ってますが、検査の結果がそう出た以上、もう一度よく調べる必要があります。明日、採血ともう一度大腸カメラ、それと胃カメラをやります。大腸カメラでは前回よりももっとたくさん生検をする予定です。」

 

 

 

…そうですか。

 

正直、どのくらいの確率でがんなんでしょうか。

「もう一度徹底的に精密検査をしてみないと何とも言えません。」

 

もし仮にがんだった場合、治るもんなんでしょうか。

「がんを手術で完全に取り除ければ、根治する可能性は十分あります。」

 

でも、がんって転移してるかもしれないんですよね。

「そうです。」

 

もし、仮に転移してたら、どうなんでしょう。

「それは転移していた場所によります。」

 

「まだがんと決まったわけじゃないです。可能性が出てきた、という話です。」

 

 

 

正直なところ、言われたときは思いの外冷静だった。

確定というわけではない、ということにすがっていたからかも知れないけど、どこか他人事のような感じでもあった。

 

 

奥さんにラインする。

 

がんかも知れないって。まだわからないけど。

 

驚きと心配の返信。そして、確定ってわけじゃないんでしょ?という僕と同じすがり方をしていた。

 

再検査の結果を待つしかない。それまでは何を考えても仕方ない。

 

そう、何を考えても仕方ないんだから。

その日は冷静だった。

 

 

夜に手紙やメールを書いて、翌日読み直すととんでもなく恥ずかしいことを書いているという。

 

そう、夜は人を冷静にさせなかった。