-18- 流れ行く景色。
転院先の病院は車で30分程。
親が車で来てくれた。
最初に入院したこの病院は、初め夜間救急で来たときは3時間待たされたり結局胃腸炎って言われたり、正直第一印象は良くなかったけども。いざ入院したら先生達は真摯に、丁寧に対応してくれた。色々苦しい処置はあったけど。例えばイレウス管とか、イレウス管入れながらの胃カメラとか。あと、イレウス管とか。
看護師さん達が、見送ってくれた。
こんな鼻から管出た若い子(注:80歳と比べて)を優しく面倒みてくれてありがとうございました。
鼻の管を止めるテープを張り替えるときに、ミリ単位のこだわり要求をしてた以外は、扱いやすい大人しい患者だったと思います。
治ったら、挨拶に来ますね。お菓子持って。
駐車場へ通じる裏口を出て久し振りのシャバの空気を感じながら、パジャマのままで紙袋を持った30代男がフラフラ車に乗り込む。紙袋の中身は、もちろん腸液を溜め込む袋だ。バッチリ鼻と繋がっている。
流れ行く久し振りのシャバの景色は、もはやただの憧れの景色だった。
この景色の中を、普通に、ただただ普通に、歩きたい。
あと、ご飯食べたい。
色々道を間違えながら、病院に到着。
とても広い病院だ。
3階まで吹き抜けになっている受付待合室にパジャマで座っているのは1人だけだったが、とにかくたくさんの人がいる。
ここは、日本有数のがん専門病院。
そう、この病院にいる患者は全員、がんなんだ。
そうか…同じなのか。
ここにいる人全員、あの夜を過ごしてきたのか。患者本人も、その家族も。
がんを乗り越えられそうな気がする。
そういう気にさせてくれる病院。
さあさあ、第2ラウンドの始まりだ。