-64- ちょっと入院しに行こうぜ。
入院の朝。
リュックを背負って電車に乗る。
端から見て、これから入院しに行く壊れかけのお尻を抱えたがん患者には、到底見えないだろうなぁ。
入院もこの1年で3回目ともなると慣れたもんだ。ちょっとホテルに泊まりに行くぐらいの感じ。まあ、命に関わらない手術だからだけど。
手続きをして病室へ。差額ベッドなしの6人部屋。窓際で眺めは良い。
入院計画書を渡された。
病名「複雑痔瘻」
人の名前みたいな響き。
がん専門の病院じゃないから、入院患者の年齢層は様々。
例によってカーテン越しに同部屋の皆さんの様子が伝わってくる。肛門科にかかってる人が集まってるので、とりあえずみんなお尻関係に悩みを抱えている。
隣のベッドは若い人。毎日奥さんが来ててラブラブ。ラブラブだけどキッチリお尻は痛い。
向かいのベッドは抗がん剤してるおじいさん。ストーマも付けてるらしい。でも陽気で声がデカい。看護師さんに再三アプローチかけるも笑ってごまかされる。でも毎日来るおばあさんとラブラブ。
そのお隣はお相撲さん。存在感が凄い。病院食じゃ絶対足りないよね。たぶんベッドも足りない。
2つお隣はおじいさん。間食しまくってベッドの周りがお菓子だらけなことを看護師さんに注意されるも、だって美味しいんだもんの一言でかわす剛腕。
痔瘻の手術は下半身だけの麻酔。腰に麻酔を打つんだって。
嫌な思い出が甦る。
最初の開腹手術をした時の硬膜外麻酔。背骨の間隔が狭くて結局麻酔できなかった。高校生の時から腰痛持ちの僕は、背中もさることながら腰もぶっ壊れている自信がある。
手術は翌日。
何事もなければいいんだけど。