そして新米パパは小腸がんになった。

働き盛りの30代、長男生まれて2ヶ月後、新米パパは小腸がんになった。がん患者の日常と心情を徒然なるままに綴るブログ。

-28- 朦朧。

穴だらけの背中を背にして仰向けに寝る。

ドラマでよく見る、大きな丸いライトが目に眩しい。

 

いよいよだ。

 

お腹を30センチ切り開き、15センチの腫瘍を周りのリンパ節や筋肉ごと根こそぎ取り除く。予想以上にがんが広がっていれば出来るだけ取ってお腹を閉じて、後は薬でがんばる。そうなれば恐らくストーマ登場。背中の筋肉と神経を取れば松葉杖登場。

開けてみなければわからない、そんな勝負だ。

 

「はい、では全身麻酔入れていきまーす。」

 

さあ……いよいよだ………!

 

 

「あ、目が覚めました?」

 

……あれ?

…………ここは?

……終わったの?

 

正直、目覚めた時は朦朧としてあまりよく覚えていないが、一瞬の出来事だった。

あっという間に麻酔にかかって、一瞬目を閉じただけぐらいの感覚だ。夢を見るとか何もなかった。

 

場所は回復室だったようだ。

 

ぐわんぐわんに回る視界に、先生が目の前でグッと親指を立てたのが映った。

 

看護師さんに何やら声をかけられ、そのままもう一度寝たようだ。

 

 

…………ん?

 

あ。

奥さんだ。

奥さんがいる。

 

その隣は、親父だ。さらにその隣は、兄嫁さんだ。来てくれたんだ。その隣は母親だ。

…ったようだ。正直あまりはっきり覚えていない。回復室から病室に戻っていたが、大部屋から1人部屋に移っていた。

 

 

後から聞いた話だが、その時僕は、ボーッとしながらありがとうと連呼していたそうだ。

 

しばらくみんなで話していたようで、そして看護師さんを残してみんな病室を出ていった。

 

 

 

お腹のあの位置を探ってみた。

 

何も、付いていなかった。