そして新米パパは小腸がんになった。

働き盛りの30代、長男生まれて2ヶ月後、新米パパは小腸がんになった。がん患者の日常と心情を徒然なるままに綴るブログ。

-37- 料理は…。

退院後の楽しみといえば、やっぱり食事だ。

 

1ヶ月半の絶飲食。

1ヶ月半と最初からゴールがわかっていれば大分気持ちは違うのだろうけど、2〜3週間過ぎた頃の先の見えない感じは、なかなかヘビーだったと思う。持ち前の諦めの良さで心を閉ざして何とか乗り切った。まあ、死ぬかもしれないと悩んでたから、それどころでない時期もあったけど。

前に書いた通り、ピークを過ぎたらひたすらご飯の写真や動画を求めてネットサーフィンに繰り出す毎日。アレも食べたいコレも食べたいと妄想したもんだ。今思えば、食べたいと思うのは生きたいと思うことだったのかなぁ。いや、そんなに深い意味はないな…。

いざとなったら流動食で涙を流す始末。

 

それでも、退院したらハンバーグ食べに行こうラーメン食べに行こうと思っていた。けど。

全然外食しようと思えない。

無理無理、絶対吐くわ。

 

そんな退院直後の1〜2週間。

 

 

奥さんが、「腸を切った人を元気いっぱいにする料理」の本を買った。

小腸の終わり部分と盲腸と大腸の始め部分をほとんど切った僕のためにあるような本。いわば、「腸という腸を切った人を元気いっぱいにする料理」の本。

中身を見ると…。

わぁ、健康的〜。

これ絶対、味ないでしょ。

 

この中から食べたいの選んでみて〜

と言われたものの。病院食と変わらんぞなもし。

 

じゃあ、肉と魚を1日ずつ交代で食べることにしよう。ご飯はお粥ね。

 

肉料理は挽き肉と豆腐と野菜のハンバーグ。

 これ、奥さんのオリジナルらしい。あえて本を見ない。さすがや。

 

これ以上健康的な肉料理があろうか。

 

…うん。

美味しい。

しみじみ染みる美味しさ。

 

魚料理は鮭を出汁に一晩漬けて焼いたやつ。

焼き魚は嫌いじゃないけど、入院前はわざわざ魚を食べようとなんてしなかった僕。

 

あれ?

魚ってこんなに美味しかったっけ…。

 

 

食べてるうちに、美味しい理由がわかった。

 

生きて、家でご飯を食べてるから。

作ってくれている人が、最愛の人だから。