そして新米パパは小腸がんになった。

働き盛りの30代、長男生まれて2ヶ月後、新米パパは小腸がんになった。がん患者の日常と心情を徒然なるままに綴るブログ。

-20- 握手と陽気。

大都会のど真ん中だった。

 

高層の窓から見える景色は、およそイメージしてきた病院のそれとは似つかわしくない豪華さだった。

 

「話は前の病院の先生から聞いてますよ。一緒にがんばっていきましょうね。」

 

 

握手が印象的に力強い先生と、陽気な関西弁の先生の2人が担当になってくれた。

プロフェッショナルとは案外こういう性格の人なのかも知れない。自分も仕事復帰できたら、お客さんに力強く握手するか陽気に話しかけてみようか。

 

「入院初日から申し訳ないんですが、早速これからCT撮りますよ。一応画像は前の病院から貰ってるけど、隅々まで調べるから。ウチのCTは日本で最新式だからね。バッチリ見ていきますよ。」

「どういうとこ見ていくかというと、他にがんが飛んでないかどうかを重点的に見ますよ。」

 

大部屋の病室で、大声でがんがどうこうの会話ができるのはさすががん専門病院。普通の病院じゃそうはいかないよなぁ。

 

えっと、もし、もし転移が見つかったら…?

 

「手術の方法が大幅に変わるよね。手術で取れないようなところに万が一飛んでたら、辛抱強く治療していかなきゃいけないこともまあ、ありますね。」

 

さすがに、ハッキリと患者に言う。

 

「そのイレウス管と絶飲食がほんと辛そうだから、どっちにしても手術して管取りましょ。ご飯も手術したら食べられるようにすぐなるから。手術は今スケジュール調整してるけど、とにもかくにもCTと大腸カメラで調べないとね。」

 

早くも先生に後光が見え始めましたよ。

管と絶飲食。これがなくなるなら、何にでも耐えますよ。

 

 

ところでCTなのだが、実のところ前の病院で撮ったとき撮りながら吐いてしまっていた。

イレウス管が突っ込まれた直後に造影剤入れたのがマズかったのか、豪快にやってしまった。何も食べてないから大惨事にはならなかったけど。これまで健康診断とかでも、造影剤は苦手だった。気持ち悪くなっちゃうんだよね。

 

一応その旨看護師さんと技師の人に伝えた。

そしたら、過保護過ぎるぐらい色々気を遣いながらやってくれた。すいませんねほんともう…なんか申し訳ないです。

でも造影剤入れるために刺した針がその日1日刺しっぱなしだったのはご愛嬌。

 

 

看護師さんはみんな若くて優しくてかわいい人ばっかり。この病院の特殊性考えると、ちょっと意外。みんなこう見えて、修羅場くぐってるだろうな。こんな病気ばっかりだと患者さんも色んなこと考えちゃうし色んな人いるし、色々ありそうだろうに。

 

 

大部屋の4人のうち、自分含めた3人が絶飲食のようだ。隣のベッドのおじいさんは明日手術らしい。真ん前のベッドのおじさんは術後の予後がよくないらしい。斜向かいのベッドのおじさんは明日退院らしい。カーテン越しでもどんどん情報は入ってくる。明日手術のおじいさんは、長い期間かかって遠くから出てきて、ようやくこの病院での手術を明日やれることになった。よかったねぇおじいちゃん、と娘らしい人が声をかけている。

まあがんになった時点でよかったねも何もないけどね、と、長期の管と絶飲食で卑屈になった隣のベッドの新参者が心の中でひねくれる。

 

でもその後徐々に、あぁ、この病院来れてよかったなぁと、このひねくれ者も思うようになっていくのだった。

 

 

 

さ、明日はここ最近で3回目の大腸カメラ。

もう慣れたもんですぜ、とお尻の穴も言っている。