-19- 暴走する妄想。
「乳児は色々と感染の恐れがあるので、病院には連れてこないように。」
事前に病院から言われていた。
何ということだ…。
生ける宝物、又の名を長男に会えない…ですって…?
医者がそう言うならしょうがないけど…。
転院前の病院では、1階の待合室までなら連れてこれた。
生後2ヶ月の長男。恥を忍んで堂々と敢えて言おう。
世界で一番かわいい。
異論は認めない。
まだ目の前のおじさ…いや、お兄さんがパパなのか見知らぬ変なおじ…お兄さんなのか全く区別がつかない年齢で、パパがんになっちゃってごめんね。パパがんばるよ。こうなったらこの子は将来医者になってもらうかなぁ…ふふふ。でもその時は大人の事情で医学部は国立に入ってもらいたいなぁ。スポーツは何をやらせようかなぁ。やっぱりサッカーかなぁ。モテそうだもんなぁ。パパがやってた水泳は同じところひたすら往復する地味極まりない練習風景なスポーツだからなぁ。サッカーは練習風景が既にかっこいいからなぁ。やっぱり練習風景がかっこよくないと。バスケもいいなぁ。まあなんにしても、素直な子に育ってくれればいいなぁ。パパだいすきーなんて言われたらもうどうしようふふふふふへへ。うーん、寝顔…かわいいなぁ…ふふふふふふふへ。
書いてたらキリがない妄想しながら待合室で鼻から管出しながら抱っこするのが無上の楽しみだったのだけど。
仕方ないです…これも息子のため、ガマンします。
ということで、転院先の病院に着いたとき、駐車場の車の中で30分抱っこしてた。だって次会うときは治って退院したときだから。
まあ奥さんには毎日写真をLINEしてもらうけどねっ。
うん、そうだ。次に会うときは治ったときなんだ。
がんばろう。
何があっても、耐えよう。
小さな寝息を聞きながら、そう思った。