そして新米パパは小腸がんになった。

働き盛りの30代、長男生まれて2ヶ月後、新米パパは小腸がんになった。がん患者の日常と心情を徒然なるままに綴るブログ。

-4- サイレン。

大通り沿いにあるウチのマンション、救急車のサイレンがいつもうるさくて仕方ない。

でも今夜のサイレンは僕を迎えに来てくれた正義の味方参上のテーマ。

 

救急車呼ぶ前に救急病院に自分でいくつか電話してみたけど、どこも受け入れはできない、明日朝外来に来て下さい、の繰り返しだった。

 

救急車の中。

救急隊員の人が病院に連絡する。1件目で受け入れOKとのこと。流石だわ。流石プロ。

 

そこからが、長かった。

 

 

病院に着いて、フラフラ歩いて待合室のイスに座る。救急隊員のお兄さんが受付してくれた。夜間外来で順番待ちするとのこと。

 

どのくらい…?

「うーん、たぶん2時間ぐらい?」

 

待合室は夜だというのに満席。ワイワイ賑やか。結構みんな、元気そうだけど…。

 

最初は普通に座っていたけど、自然とズルズル体がズレていく。

完全にヘンな人だ。

待合室から離れて、薄暗い廊下にあるベンチに移動。ここなら横になれる。合間にトイレでゲーゲー吐く。やっぱり緑色だなぁ。

 

……。

どのくらい時間経ったかな。

うん、3時間経ってる。

もう知らん。本格的に寝てやる。

 

その時、聞き覚えのあるおばちゃんの声。

ウチの両親だった。

生後2ヶ月の長男を連れては病院に来ない方がいいと言われた奥さんから連絡受けて、高速飛ばして1時間かけて来てくれたらしいが、ベンチに転がってた息子を見て軽くショックだったと後で聞いた。

 

それからまた暫くして、看護師さんに名前を呼ばれた。

 

軽く問診を受けて、応急処置室のベッドに寝かせてくれた。栄養失調になってるからと言われ点滴された。今思えば、記念すべき1発目の注射。

そのまま明け方まで寝ていた。

 

栄養剤点滴してもらって、何だか体が楽になったような気がする。まともに喋れるようになった。

これ、何の病気ですかね?

 

「胃腸炎だね。」

 

あぁ〜、やっぱりそうなんですね。

 

「入院してもいいけど、週末ってベッドに空きがなくてね。まあ、今日はとりあえず外来の予約取って一旦帰ってまた来てよ。家族にうつるから隔離してね。水分はよく摂るように。」

 

親の車で帰宅。

 多少元気になったけど、うー、吐き気は変わらず。

あ、緑色のこと言ったっけ……。

 

その翌日の朝、外来へ。

 

「レントゲン撮りましょう。夜間救急では撮れなかったみたいだから。」

 

板に向かって息吸って止めてハイチーズ、パシャ。

今思えば、記念すべき1枚目。

 

処置室のベッドで待っていた。

水分補給を忘れずに水を飲む。

 

 

「すぐこのまま入院して下さい。腸閉塞です。水分は厳禁なので絶対に飲まないように。」

 

え?

すぐ入院?

いや、それよりも、水厳禁?

 

マジか。

 

-3- 元からパンパン?

次の日は土曜日で休み。

 

この間病院行ったけど、吐くようになっちゃったからなぁ。下痢も止まらないし、お腹が張ってきた。出して飲んでプラマイゼロのはずなのに、なぜにお腹が張ってくる?もう4日ぐらいほとんど何も食べてないぞ。

 

フラフラしながらもう一度この間の病院へ。

…ゲッ!土曜日休み?!

 

というか、この辺土曜日どこもやってない。

カーテンの閉まった病院の入口前でガックリ座り込んでスマホを調べる。道を歩く人から憐れみの視線を受けてるような気がする…。

 

隣駅の駅前クリニックが土曜日もやってるぞ。ヘロヘロしながら電車に乗った。

 

…診断は。

 

「胃腸炎ですね。」

 

あぁ〜、やっぱりそうですか。そうですよね。

うーん。

 

「でも長引いてるようだから、平日になったら一度大きい病院で診てもらったほうがいいね。水分はしっかり摂るようにね。」

 

平日かぁ。

休めるかなぁ。

 

 

翌日日曜の夜。

 

 もうだめだ。

吐いても出しても気持ち悪いのが治まらない。お腹はもうパンパンだ。元から結構パンパンだったって?それは言わない約束。

 

新米パパは人生初の救急車を呼んだのだった。

 

 

 

 

 

-2- バケツをひっくり返したような。

仕事していてもお腹痛い。

 

うーん、何かヘンなもの食べたかな。

まあいいや、そのうち治るでしょ。

 

その日は午後から休みを取って、長男の予防接種へ。ロタウイルスだけ有料。スプーン数杯で1回1万5000円。これも補助してもらいたいなぁ。

 

その帰り、ショッピングモールに寄ってオムツとミルクを調達。その最中…。

便意が追いつかないぐらいのペースでトイレに駆け込む。水のようなのがひっきり無しに、自分の意思とは関係なく。だんだん意識が遠くなったきた。体中の水分、下半身に全員集合。

 

これ、ヤバいやつだ。

帰りに近所のお医者に寄ったけど、どこももう終わってた。しょうがない、明日午前休取って出直そう。

念のためその夜から奥さんと長男とは部屋は別。トイレも、出たら除菌スプレーで徹底的にシュッシュッ。

 

パパ、完全隔離された。寂しいよう。

 

翌日、改めて近所のお医者へ。

地元ではとても丁寧で評判のよい先生。ここ数日で突然こうなったこと、トイレに駆け込むペースが半端でないこと、5年ぐらい前に盲腸を薬で散らしたことを伝えた。

 

そうすると、いつもの少々オーバーな位の丁寧な口調で、

「胃腸炎ですね。」

 

あぁ〜、そうですよね。僕もそう思います。これが噂の胃腸炎、きついわぁ。

 

脱水症状になりかかっているから、よく水分を摂るように言われ、整腸剤をもらって帰宅。今日は安静にしているように言われたので午後も会社は休んだ。繁忙期じゃなくてよかったよ。

 

次の日は出勤した。

繁忙期でないとはいえ、急ぎの仕事が詰まっててんてこ舞いだったから。0時少し前に会社を出る。その次の日も同じ時間。

 

外出中、出されたコーヒーを飲んだら頭がぐるんぐるんに回って訳がわからなくなった。会社に戻ってから、初めてトイレで吐いた。

 

これ、ヤバいやつだ。

ごめんなさい、ちょっと応接で休ませて。吐いて休んだらちょっと楽になるから。

 

2回目に吐いた時に気付いた。

 

あれ?これ、便器が緑色なんだけど……?

 

 

 

 

 

 

 

-1- お腹痛い…?

2017年は年初からバタバタだった。

 

ウチの会社は12月から3月が繁忙期、空気読まずに正月明けからインフルエンザでダウン。予防注射って感染しないわけじゃないのね…。

ようやく復帰して溜まってた仕事に超追われる最中、2月に待望の第1子長男誕生!

 

なんてこった…こんなかわいい生き物がこの世にいるなんて。

 

この子のためならなんでもできる。よーし、パパがんばっちゃうぞ。

 

31時間かかったお産、奥さん完全にグロッキー。でも旦那も31時間付き添って仲良くグロッキー。ごめんね、無痛分娩にしてあげられなくて…。

 

噂には聞いてたけど、ホントに2時間毎にパッチリ起きてミルクの催促するかわいい長男。

繁忙期だから0時に帰宅、1時に夕飯、2時に寝る、4時にミルク、6時に起きて出勤…を繰り返す日々。

いやー、地獄だわ。

いや、地獄じゃない。

だってこんなにかわいいんだもん。

 

ヘロヘロで夜がふけて、地獄の原因の張本人に癒されて、今日もまた夜が明ける。そんな無限ループ。

 

 

 

繁忙期も終わり、授乳も落ち着き始めた4月下旬のことだった。

 

あれ、お腹こわしたかな…?お腹痛いぞ。