-34- 流れ行く景色 其の2。
退院の朝。
最後の病院食はなんとなく名残惜しい。
退院してからの奥さんの手料理やら外食やらからすれば、味気ない食事であろう病院食だ。でも、僕は病院食の美味しさとワクワクを忘れないだろう。
奥さんと両親が迎えに来てくれた。
病院貸出のパジャマを脱ぎ、Tシャツとジーパンを着る。普段着は1ヶ月半振りだ。あれ?ベルトってどうやって締めるんだっけ?
ナースステーションに寄って、お世話になった看護師さん達にご挨拶。
「あらー、爽やかな格好でー。」
「あれ?もう退院なんでしたっけ?早ーい。」
ほんとに、看護師さんの明るさに助けられることがたくさんあった。
ありがとうございました。
受付で退院の手続き。
高額医療費の限度額認定証を出したおいたので、とりあえず払える金額でよかった。
医療保険の診断書と、傷病手当ての書類も提出。この辺はきっちりやっておかないと、あっという間に家計は火の車になる。なんせ給料はしばらく1円も入ってこない。
駐車場の車に行くと、長男が母親の横でスヤスヤ。今日から思う存分一緒にいられる。抱っこはお腹の傷が塞がりきってないからしばらく控えるように言われてるけど。普通の子より体格の大きいウチの子、お腹パッカーンっていっちゃうよ、と先生談。
まあまあ、顔見て笑顔返されるだけでパパは大満足。
車の窓から外が見える。
転院の時とは違う。今度はこの景色の中を歩いていいんだ。
自由だ。自由って、素晴らしい。