そして新米パパは小腸がんになった。

働き盛りの30代、長男生まれて2ヶ月後、新米パパは小腸がんになった。がん患者の日常と心情を徒然なるままに綴るブログ。

-33- 最後の夜。

手術が終わってから、部屋が大部屋から個室になっていた。

 

手術直後は経過観察で個室になるのだとか。

差額ベッドが怖くて聞いてみたら、この部屋はかからない個室だそうで。次の人が来たら移ってもらうから〜と言われてから、6日間そのまま快適な個室生活だった。ありがたや。

 

「ご飯、かなりちゃんと食べられてるみたいですね。傷口もキレイだし。毎日歩いてるし。」

 

5分粥食になってからというもの、ご飯が急にご飯らしくなって。うれしくてうれしくて。毎回完食していた。

 

「じゃあ、明後日ぐらいに退院しちゃいますか。」

 

え。

いいんですか?

 

「まあ、最低1ヶ月は自宅療養になるけど、退院は全然問題ないですよ。」

 

 

 退院か………。

 

退院できる日が来るなんて。

イレウス管を入れた夜、告知された夜、手術前日の夜。

ご飯が食べられて、家に帰って、4ヶ月の息子を抱っこして、家の布団で川の字で寝る。そんなことは考えるのも贅沢だと思っていた夜。

 

退院できる。

 

家族に連絡したら、みんな本当に喜んでくれていた。心配かけてたんだなぁ。

 

 

退院の前日、大部屋に移った。

入院生活最後の夜は、なんとなく名残惜しくもあった。

退院したら、何をしようか。

もうちょっと体動くようになったら、旅行行きたいな。でもお金ないなぁ。しょうがないから実家にちょっと帰るか。田舎でのどかな実家に。釣りに行きたいな。のんびり1日、ボケーっと釣りをしたい。そうだ、入院生活のことをブログに書いてみよう。あんまり深刻で難しい感じにしないで、ゆるーい感じで。

 

「術後の精密検査の結果は、1ヶ月後に出ます。小腸や大腸からちょっと外れたところ、直腸の近くに小さな腫瘍があったので切除したけど、それが何なのか検査します。手術前のCTで診ると、がんが小腸から点々と進んでいっている。これが、途中で食い止められてここで止まったのか、それとも拡がっている最中だったのか。それを突き止めます。」

「この映っているがんは全部取り除いたけど、拡がっている最中だったとしたら、目に見えない細胞レベルでこの辺りにがんができている可能性が高くなる。そうなったら、抗がん剤で治療をしていくことになるから。」

 

先生の説明が頭を過る。

 

抗がん剤か…。

 

噂は聞く。副作用がキツいって。

どうキツいのか、どのくらいキツいのか。

考えても仕方ないけど。

やらないと死んでしまうなら、やるしかない。家族を守るために。

 

まあ、結果が出るのは1ヶ月後。

とりあえず、のんびりしよう。

 

入院最後の夜は更けていった。