そして新米パパは小腸がんになった。

働き盛りの30代、長男生まれて2ヶ月後、新米パパは小腸がんになった。がん患者の日常と心情を徒然なるままに綴るブログ。

-32- 至近距離。

【脊柱管狭窄症】

 先天的または後天的に背中の脊柱管(髄膜に包まれた脊髄などが通る管)が狭くなり、 脊髄や神経根が圧迫される病気。頸椎や腰椎に起こることが多く、伸ばして立っていたり歩いたりすると、ふとももや膝から下にしびれや痛みが出て歩きづらくなる。日頃の予防は背筋を伸ばして歩くのでなく、少し前屈みになって歩くと楽になる。

 

 

手術前の硬膜外麻酔が入らなかった件。

手術から3日経っていた。

 

「以前に脊柱管狭窄症と診断されたり、家族にそういう人がいたりしませんか?」

手術後、先生から聞かれた。

 

そういう診断されたことはないですが、高校生の時にギックリ腰やって以来、腰痛と背中痛が慢性的にずーっと持病ですねー。

 

「なるほどー。その辺がもしかしたら関係してるのかも知れないね。狭くてどうにも入っていかなかったらしくて。まあ、特に早急にどうこうってわけじゃないので、そのうちどこかで診てもらったらいいかもしれないね。」

 

しかし、ギックリ腰って名前は何とかならんもんですかね。若くてギックリ腰って言うと、全然周りが同情してくれないんですよねー。言葉の響きが軽すぎて。あんな痛いもんはないのに。

 

「あー。確かに年寄り臭いよね。」

 

欧米だとギックリ腰は「魔女の一撃」って言うらしいですよ。日本でもそのぐらいインパクトある名前にすればいいのに。

 

「ほんとだねー。」

 

そんな他愛ない会話ができるようになったのも、手術が成功したからか。

 

「それで、硬膜外麻酔が入らなかったから代わりに入れてたその手の甲からの麻酔、どうしますかね。代わりに飲み薬にすることもできるけど。」

 

あー。外せるなら外したいです。

 

「すごい歩いてくれてるし、外しちゃいますか。ロキソニン飲めば何とかなるでしょう。」

 

正直まだお腹の傷は動くと激痛だったが、管はどんどん抜きたい。こうして第3の管は抜けたのだった。

 

 

その日の夕方。

 

「二の腕から入れてるカテーテルも抜いちゃいますか。順調にご飯食べられてるし、もう栄養剤入れることはないでしょ。」

 

はい!お願いしまっす。

 

これで全部の管が抜ける。素晴らしい解放感。

ラストはちょっと楽しかった。

 

先生が自ら管を抜きにきたのだが、この4月に入ったピチピチの新人看護師さん3人を引き連れてきた。

 

「ウチの病院では栄養剤のカテーテルは鎖骨のところから入れるけど、この患者さんは転院してくる前の病院で入れたから、二の腕から入れてるのね。これから抜くから、参考によく見ておくようにね。」

 

二の腕の裏から心臓近くまで、60センチぐらい管が血管を通ってる。それをズルズルっと抜く。そう言われるとちょっとゾクっとする。

 

「痛みはないはずですよ。大丈夫大丈夫。ちょっと違和感するかな。」

 

それから先生はピチピチの若い女性3人にあれやこれや関西弁で楽しく教えながら、僕はピチピチの若い女性3人に二の腕を至近距離でガン見されながら、無事第4の管も外れた。

 

 

 

「あらー。何にも繋がってない◯◯さん初めて見た!スッキリしましたねー。」

 

検温に来た看護師さんに言われた。

 

はは。そういえばそうだった。

ご飯も食べられる。管も刺さってない。

 

身軽だ。この当たり前の身軽が、うれしかった。