そして新米パパは小腸がんになった。

働き盛りの30代、長男生まれて2ヶ月後、新米パパは小腸がんになった。がん患者の日常と心情を徒然なるままに綴るブログ。

-38- ただそれだけで。

トトロが住んでいそうな森がいくつも見えては流れていく。 新卒で入った会社を辞めてから、しばらく実家に引っ込んでいた時期がある(仕事は一応ずっとしてたけど)。 実家からは、最寄り駅まで歩けば1時間近くかかるし、最寄りコンビニでも歩けば15分はかかる…

-37- 料理は…。

退院後の楽しみといえば、やっぱり食事だ。 1ヶ月半の絶飲食。 1ヶ月半と最初からゴールがわかっていれば大分気持ちは違うのだろうけど、2〜3週間過ぎた頃の先の見えない感じは、なかなかヘビーだったと思う。持ち前の諦めの良さで心を閉ざして何とか乗り切…

-36- おじいちゃん。

退院して2週間程経った。 まだお腹は痛かったけど、だいぶ歩けるようになった。1時間ぐらいは歩き回れる。15分に1回は休憩が必要。 ふーやれやれどっこいせっと。 完全におじいちゃんだわ。 おじいちゃんといえば、同室の向かいのベッドの、退院前夜の明け方…

-35- ちょっとそこまで。

今までパジャマを着る習慣はなかった僕だけど、すっかりパジャマでゴロゴロすることに慣れてしまって、家に帰ってからは基本的にずっとパジャマで過ごしていた。 パジャマ、楽。 何よりも、自宅は楽。落ち着く。 とにもかくにも、パパは帰ってきたぞ。 ちな…

-34- 流れ行く景色 其の2。

退院の朝。 最後の病院食はなんとなく名残惜しい。 退院してからの奥さんの手料理やら外食やらからすれば、味気ない食事であろう病院食だ。でも、僕は病院食の美味しさとワクワクを忘れないだろう。 奥さんと両親が迎えに来てくれた。 病院貸出のパジャマを…

-33- 最後の夜。

手術が終わってから、部屋が大部屋から個室になっていた。 手術直後は経過観察で個室になるのだとか。 差額ベッドが怖くて聞いてみたら、この部屋はかからない個室だそうで。次の人が来たら移ってもらうから〜と言われてから、6日間そのまま快適な個室生活だ…

-32- 至近距離。

【脊柱管狭窄症】 先天的または後天的に背中の脊柱管(髄膜に包まれた脊髄などが通る管)が狭くなり、 脊髄や神経根が圧迫される病気。頸椎や腰椎に起こることが多く、伸ばして立っていたり歩いたりすると、ふとももや膝から下にしびれや痛みが出て歩きづらく…

-31- テンションMAX。

食事時の病棟内が嫌いだった。 廊下と病室に、いい匂いが立ちこめる。各ベッドに配膳される。 「はーい、◯◯さん、お食事ですよー。」 決して僕のベッドに声が掛けられることはなかった。 「はーい、今日からお食事ですねー。ここ置きますねー。」 はい!あり…

-30- 午後ティー。

他の入院患者さん達は、女性は時々若い人がいるけど男性はほぼ全員60歳以上で、70代ぐらいが主流だ。 だから30代男性はかなり珍しい。 手術翌日から病棟をガンガン散歩してる患者は珍しいらしかった。普通は数メートルがやっとか、そもそもベッドから起き上…

-29- 武士みたいなもん。

朦朧とした視界で見た先生のサムアップ。 手術は大成功だったそうだ。 懸念されていた、お腹の前の方へのがんの拡がりはあまりなく、臓器の少ない背中側へ腫瘍が大きくなっていたことで、ストーマが必要な程腸を取り除くことはなかった。背中の方も、うまく…

-28- 朦朧。

穴だらけの背中を背にして仰向けに寝る。 ドラマでよく見る、大きな丸いライトが目に眩しい。 いよいよだ。 お腹を30センチ切り開き、15センチの腫瘍を周りのリンパ節や筋肉ごと根こそぎ取り除く。予想以上にがんが広がっていれば出来るだけ取ってお腹を閉じて、後…

-27- 穴だらけ 其の2。

【硬膜外麻酔】脊髄のすぐ近くにある硬膜に背中から管を入れ、そこから麻酔薬を注入し、手術などの痛みをとる麻酔。術中・術後の痛み止めとして、全身麻酔での手術の直前などによく行われている。 勝負はいきなりやってきた。 麻酔医から前もって説明を受け…

-26- じゃれ合う笑顔。

当日の朝は、6時には目が覚めた。 昨夜は思いの外、よく眠れた。 手術の順番は朝一番なので、8時半には病室を出て手術室へ向かう。 奥さん、両親、兄が病室に来てくれた。 みんな笑顔だが、目は笑っていない。 みんな、ありがとう。心配かけるね。 まあ、ち…

-25- 前日。

「おへそ、キレイですね〜。」 そうですかぃ? たとえどんなところでも、看護師さんに褒められれば悪い気はしない。たとえおへそでも。 お腹を切るので、手術前におへそを掃除してくれた。 「ストーマの位置をマーキングしますね。」 下腹部にペンで印が付け…

-24- 生きてるだけで幸せ。

「小腸の終わりの部分に、腺がんが原因の大きな悪性腫瘍ができています。回盲部にも炎症があるので、がんそのものだけでなく、この周辺を根こそぎ取り除いて、小腸と大腸を繋げます。がんに近いリンパ節は必ず切除します。かなり大規模に取り除くので、30センチ…

-23- 味。

朝、必ず回診がある。 カーテンをシャッていきなり開けるので、油断していると危ない。 「絶飲食、どうですか?」 どうですか、って言われてもなぁ…。 いやー、キツいです。でもまあ、もう慣れましたよ。 「そうですねー。もう1ヶ月になりますもんねー。キツ…

-22- とあるおじさんの苦悩。

「昨日の検査の結果が出ましたよ。他に転移はしてないです。大丈夫、手術できますよ。」 あぁ… よかった…。 ありがとうございます。よろしくお願いします。 「小腸から離れたところには転移してないけど、小腸と大腸の周りにはがんがいくらか広がってるよう…

-21- トモダチ。

さすがの専門病院。内視鏡検査だけを行う大きな病棟がある。 点滴とイレウス管を引き摺りながらフラフラしばらく歩いて移動。大腸カメラはここのところ週1ペースでお尻に入れていたので、綿棒でも耳に入れるかのような気楽さだった。 世の中そううまくいかな…

-20- 握手と陽気。

大都会のど真ん中だった。 高層の窓から見える景色は、およそイメージしてきた病院のそれとは似つかわしくない豪華さだった。 「話は前の病院の先生から聞いてますよ。一緒にがんばっていきましょうね。」 握手が印象的に力強い先生と、陽気な関西弁の先生の…

-19- 暴走する妄想。

「乳児は色々と感染の恐れがあるので、病院には連れてこないように。」 事前に病院から言われていた。 何ということだ…。 生ける宝物、又の名を長男に会えない…ですって…? 医者がそう言うならしょうがないけど…。 転院前の病院では、1階の待合室までなら連…

-18- 流れ行く景色。

転院先の病院は車で30分程。 親が車で来てくれた。 最初に入院したこの病院は、初め夜間救急で来たときは3時間待たされたり結局胃腸炎って言われたり、正直第一印象は良くなかったけども。いざ入院したら先生達は真摯に、丁寧に対応してくれた。色々苦しい処…

-17- いったりきたり。

「明後日、転院できるそうです。すぐに検査をして、なるべく早く手術も段取りしてくれるそうです。」 後で聞いたが、事前に連絡は一本していたそうだ。 ありがたい話だ。 とてもスムーズに転院ができそうだ。 覚悟は決まった。 専門家中の専門家に全て委ね、…

-16- プライド。

ドラマや映画やら、勝手にイメージしていた告知ってもっとこう…なんて言うか……仰々しいものだと思っていたけど、案外アッサリなものなのね…。 覚悟はしていた。 うん。 がんである、ということは受け入れた。 実際そこに存在しているのだから、受け入れざる…

-15- 告知。

「急で大変申し訳ないが、今日、家族の方病院に来れますか?だめなら明日でもいいですが…。」 特急の生検から約1週間が経った日の朝、先生から聞かれた。 土日を挟んで1週間なので、本当に急いでくれたようだ。 まあ…そう聞かれた時点である程度は覚悟してい…

-14- 満員。

「下剤も浣腸もいらないですね。」 ええ。どうせ何も出ませんからね。 「はっはっはっ。」 はっはっはっ。 そんなやり取りから始まった朝だった。 2度目の大腸カメラはとってもスムーズ。大腸を突破し、小腸へGO。生検の数は前回の3倍、斬って斬って斬りまく…

-13- 夜。

消灯時間は22時。 いつも通り食べ物の動画と写真を見終えたところで、眠くなってきた。 寝よう寝よう。明日は検査だ。 ふとんを掛けて、目を閉じる。 ふー…っ。 なんとなく、スマホを開ける。 なんとなく、検索サイトを開く。 「小腸がん」 数万人に1人の希…

-12- まだわからないけど。

「ちょっと驚く話になってしまうかもしれないけれど。」 先生が前置きした。 パソコンとモニターがある小さな談話室。 先生と鼻から管の人の、1対1だ。 「正直、私達も驚いています。私達は今でもクローン病の可能性が一番高いと思っています。」 はい。そう…

-11- 別室。

病室ではテレビを見れたけど、食べ物が映った瞬間チャンネルを変えるので忙しかった。夕方のニュース番組は半分はグルメ番組なので、前半しか見なかった。 絶飲食は2週間を過ぎた頃がピークで、とにかく食べ物飲み物を見るのが嫌だった。匂いも音も嫌だった…

-10- 穴だらけ。

GWが明けるとすぐ、ウチの社長がお見舞いに来てくれた。 相変わらずフットワークが軽い。こんな鼻から管出てて喋れない社員ですいません。ありがとうございます、と、かすれ声でお礼。 お見舞いといえば、奥さんとウチの両親は毎日のように来てくれた。両親…

-9- 先立つものは。

GWのちょうど谷間の平日に入院した。 たまたまそのまま5連休に入るのでよかったけど、GWが終わったらどうしよう?産婦人科の病院が遠かったので付き添いを繰り返していたから、有休があんまりない。欠勤にしたら、お金がヤバいしな。 まあ、薬で治るなら2週…